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下腿切断( Transtibial Amputation)の概要・下肢装具・断端管理

下腿切断の概要

下腿切断とは膝関節裂隙以下レベル~足関節レベルまでの間で下肢を切断することを指す。下腿切断においては切断面を下腿三頭筋で覆うことから、伸張されることが原因で高緊張状態になりやすい。そのため、膝関節の屈曲拘縮を合併することが多い。術後早期からの拘縮予防としてリハビリテーションが実施され、装具の適応が検討される。下腿装具には後述する「短軸足・SAFE足・SACH足・Greissinger足・フレックス足」などの足部装具が併用される。ソケットとしては「在来型・KBMソケット・PTBソケット・PTSソケット・TSBソケット(後日画像追加予定)」などが用いられる。

下腿義足の歩行

義足を用いることによって切断された部分の機能を補うことができるが、ソケットや足部義足が適切に処方されていないと異常歩行を呈する。以下には、下腿切断時に生じやすい以上歩行について記載する(後日画像追加予定)。

膝関節の屈曲が遅れる

下腿義足装着時に生じる異常歩行として代表的なものが「膝関節屈曲の遅れ」である。原因は複数種類存在しているため、患者の歩様を観察しながら確実に異常歩行を防止することが重要である。頻発する原因としては「ソケットが足部よりも後方に位置していること」「下腿ソケットの初期屈曲角度が不足していること」「後方バンパーが柔らかすぎること」「抹消部分に疼痛が発生していること」などが挙げられる。

立脚初期から立脚中期にかけての膝関節伸展

通常歩行であれば、このタイミングで膝関節の軽度屈曲が生じる。しかし「足部が過度に前方に位置していること」「ヒールが柔らかすぎること」などが原因となって、膝関節の伸展が生じる。

立脚中期から踵離地にかけての急激な膝関節伸展

通常歩行であれば、膝関節の動きがコントロールされているため急激な膝関節伸展は生じない。しかし「足部が過度に前方に位置していること」「ソケットの初期屈曲角度が不足していること」「足部が過度な底屈位になっていること」などが原因で、膝関節の急激な伸展が生じる。

立脚中期の膝関節屈曲の遅れ

通常歩行であれば、立脚中期には踵離地面に向けて徐々に膝関節の屈曲が生じる。しかし「足部が過度に前方に位置していること」「ソケットの初期屈曲角度が不足していること」「大腿四頭筋の筋力が低下していること」などが原因となって、膝関節屈曲の遅れが生じる。

立脚初期から立脚中期にかけての膝折れ

通常歩行であれば、膝関節は完全に伸展しており屈曲することはない。しかし「ソケットの初期屈曲角度の過大」などが原因となって、膝折れ(膝関節の急激な屈曲)が生じる。

 

断端の管理法

切断部分の断端管理を行う目的

上肢・下肢に関わらず、四肢の切断が生じた際には手術後の断端管理が必要である。断端管理を行う主な目的は以下の5つである。

①浮腫が生じないように予防する・浮腫を改善する ②創部の治療を促進する ③断端の安定化 ④断端の成熟を早める ⑤脂肪組織を少なくする

断端の管理と義足の作成・装着まで

切断部分の断端管理法(ドレッシング)は大きく3種類に大別される。

①ソフトドレッシング【soft dressing】

ソフトドレッシングでは基本的に弾性包帯を用いて断端の管理を行う。最も一般的な方法であり、断端に圧をかけることによって浮腫の形成を予防するとともに、断端の固定による早期治療が目的である。従来から行われている方法である。創部の一次治癒が完了するまでは圧を軽めに設定し、一次治癒が完了した後には十分な圧をかけることで断端の形状を整えていく。

ソフトドレッシングのメリットとデメリット
 
ソフトドレッシング
メリット容易に装着することができる・断端の観察が容易である・安価である・特別な装置が必要ない
デメリット断端痛が強い・幻肢痛が強い・治癒が遅れる・浮腫/萎縮/循環障害を生じやすい・安定した圧迫が得られない・緩みやすいので何度も巻きなおす必要がある・出血によって感染の可能性がある

 

②リジド(リジッド)ドレッシング【rigid dressing】

リジッドドレッシングではギプス包帯を用いて断端に軽量のソケットを作る。ソフトドレッシングと比較すると、断端の固定が強い。主な利用目的はソフトドレッシングなどと同様である。創部の状態を容易に観察することはできない。

リジッドドレッシングのメリットとデメリット
 
リジッドドレッシング
メリットソフトドレッシングと比較すると創部の治癒が得られやすい・浮腫の予防効果が強い・断端の成熟が早い・断端痛が少ない・幻肢痛が少ない
デメリット創部の状態を観察することができない・ソケットの装着技術が必要になる・断端の変化に対して柔軟な対応をすることができない・ギプスソケット内の温度管理が難しい・湿度のコントロールが難しく、細菌感染の可能性がある

 

③セミリジド(リジッド)ドレッシング【semi-rigid dressing】

セミリジッドドレッシングは「ウナペースト(unna paste)」「コントロール・エンバイロンメント・トリートメント(control environment treatment:CET )」「ロングレッグエアスプリント(long leg air splint)」の3つに大別される。

ウナペースト(unna paste)では、柔軟性があり伸張性のないペースト(ゼラチン・グリセリン・酸化亜鉛・水の混合物)を作成し、ガーゼに塗布することで断端の表面を覆う。さらに、ストッキングをかぶせ、ソケットの装着をする。ペーストが断端を保護するため、早期から荷重することができる。

コントロール・エンバイロンメント・トリートメント(control environment treatment:CET )は、1900年代後半に発表された比較的新しい方法である。リジッドドレッシングの欠点を極力減らした方法であり、専用の空気制御装置を用いて行う。このほかにも、ドレッシングバッグ・フレキシブルホースなど、CETの実施にはある程度の準備が必要である。基本的な治療方針としては空気圧による圧迫で浮腫を予防することである。イメージとしてはメドマーに近しい部分がある。

ロングレッグエアスプリント(long leg air splint)では、断端に対して簡単に包帯を巻き、さらにストッキネットをかぶせる。最後にエアスプリントと呼ばれる仮の足部を装着することで断端管理をする。エアスプリント内の圧を変えることにより浮腫の管理を行う。こちらもCET同様、イメージはメドマーに近しい部分がある。

セミリジッドドレッシングのメリットとデメリット
 
セミリジッドドレッシング
メリット創部の観察が容易である・着脱が容易である・早期の荷重もしくは部分荷重が可能である・早期の立位や歩行が期待できる・創部の治癒が良好・特別な技術が必要ない

【CET】加圧の変化によって疼痛や浮腫に柔軟な対応が可能・断端に最適な環境を作ることができる・断端の観察が可能

デメリットギプスソケット内の温度管理が難しい・湿度のコントロールが難しく、細菌感染の可能性がある・ロングレッグエアスプリントにおけるエアスプリントは体重不可に限度がある

【CET】機械が必要である他、行動の制限が伴う・バッグが透明なので創部が直視できてしまう・空気音がある

 

下腿義足と併用される足装具

下腿切断では足装具の利用が必須であり、以下のような装具が適用となる。代表的な装具として「短軸足・SAFE足・SACH足・Greissinger足・フレックス足」の特徴を簡単に紹介する。

短軸足(たんじくそく/あし)

短軸足は足関節の底屈・背屈のアライメントを容易に調整することができる。しかし、衝撃吸収の面では他の足装具と比較すると劣っているため、下肢へ伝わるショックが大きい。

SAFE足(セイフそく/あし)

SAFE足は足底部分に足底筋膜バンド(下側)と足底靭帯(上側)が入っていることが特徴である。多方向の運動に対して柔軟な対応をすることができる。

SACH足(サッチそく/あし)

SACH足は踵部分にウェッジが入っていることや内側キール(灰色)が入っていることが特徴である。ウェッジの影響で衝撃吸収性能が良く、下肢へ伝わるショックを大幅に軽減することができる。

Greissinger足(グレイジンガーそく/あし)

Greissinger足は他の足装具とは異なり、足関節の回内外運動を行うことができるという特徴がある。より自由度が高まるため不整地歩行などでも対応可能であるが、外見があまり良くない。

フレックス足(フレックスそく/あし)

カーボングラファイトが採用されている足装具である。大きなエネルギーを発揮することができ、運動などを実施することができるという特徴がある。

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