糖尿病(Diabetes mellitus)概要・合併症・Ⅰ型/Ⅱ型・治療
概要
血糖値の高い状態が継続する病気である。三大合併症である神経障害・網膜症・腎臓障害の他にも脳血管障害や心疾患・閉塞性動脈硬化症などを合併することもある。Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病に分類され、内科学的には糖尿病性ケトアシドーシスをしばしば引き起こす。
三大合併症
糖尿病には、糖尿病性神経障害・糖尿病性網膜症・糖尿病性腎症の3つの合併しやすい障害がある。これらは糖尿病の3大合併症と呼ばれており、各種医療系国家試験でも頻出である。
糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害では手足にしびれや疼痛が発生する。原因は明確になっていないが、高血糖状態が継続することにより血流の停滞が生じ、神経細胞に障害が起こるという説もある。糖尿病性神経障害によるしびれや疼痛は糖尿病患者の約15%に発生しており、無症状の患者を含めると30%から40%ほどにのぼると推察される。ほか2つの合併症と比較すれば、比較的合併頻度の高い症状である。
しびれや疼痛が自覚できる間は軽度であると考える事もでき、慢性化してくると感覚神経の鈍麻が生じる。すると四肢の傷や怪我に気づくことができず、最悪の場合壊疽により切断を余儀なくされる。臨床現場では糖尿病性神経障害患者に対して、机の脚や角など最新の注意を払うことが大切である。
糖尿病性網膜症
糖尿病性網膜症ではその名の通り目の網膜に障害が発生する。網膜は外界からの光刺激を電気刺激に変換し、後頭葉へと送ることで視覚の役割を担っている。糖尿病性網膜症では視力低下が主な症状となる。初期は大きな変化が見られず、自覚症状にも乏しい。中期になるとぼやける感じや視力の低下などを自覚するようになる。慢性化して終末期になると視力低下が著明となり、最悪の場合は失明する。緑内障など他の眼疾患を併発することもあるため、注意が必要である。
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症では腎臓の糸球体に異常が生じる。原因は明確になっていないが、糖尿病性腎症によって腎臓の機能が徐々に損なわれることは紛れもない事実である。糖尿病性腎症の初期は自覚症状に乏しく、腎不全期になるまで発見されないこともある。末期になると透析が必要になり、日常生活に大きな影響が生じる。腎臓の障害によって体内の水分量などを適切にコントロールすることができなくなるため、浮腫などを併発することが多い。対策として塩分量の制限やタンパク質・カリウムの制限、食事指導などを行う。糖尿病性腎症は日本における透析開始理由の割合が第一位となっており、透析を開始する患者のうち約4割強が糖尿病性腎症患者である。病期の分類は5段階に分かれている。詳細な分類や治療は以下の通りである。
Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病
糖尿病はⅠ型とⅡ型に分類されている。それぞれの特徴は以下のとおりである。
Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型糖尿病は主にインスリンの分泌低下が原因である。インスリンは人間の体内で唯一、血糖値を下げる働きを持つホルモンであり、膵臓のランゲルハンス島B細胞から放出されている。インスリンの分泌が低下すると、血糖値のコントロールが正常に行われなくなり、Ⅰ型糖尿病になる。Ⅰ型糖尿病は子供や若年層に多く、生命を脅かすこともある。過食や食生活が原因となることもあるが、適切な治療を行うことで改善できる。糖尿病性ケトアシドーシスになることが多い。治療にはインスリンが必須である。
Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型糖尿病は高齢者に多い糖尿病である。Ⅰ型糖尿病とは異なり、原因は明確になっていない。生活習慣や運動不足など複数の要因が重なり合って発症していることもある。Ⅱ型糖尿病においてはインスリンが正常に分泌されている。しかし、インスリン抵抗性の亢進などによりインスリンが働きにくくなっていることもある。Ⅱ型糖尿病ではケトアシドーシスになることは少ない。
糖尿病の診断基準
糖尿病の診断基準は以下のようになっている。